アメリカの大学で美術を専攻していた頃、
カナダ人の友達に誘われて、ある日ちょっと変わった場所へ遊びに行きました。
そこは、大学のOBで、すでにプロの画家として活動している女性のアトリエ。
なんと、芸術家しか住めないというユニークなマンションで、
入居者は1階のギャラリーに定期的に作品を出すことが条件だそうです。
到着してピンポンを鳴らしても、反応なし。
携帯にかけても出ない。
「どうする?」なんて言いながら、10分ほどドアの前でたむろしていたところ、
ようやく気づいたのか、彼女が「ごめんごめん」と現れました。
髪はボッサボサ。
だけどその姿が、なんだかとても印象的で、おもしろい初対面となりました(笑)
彼女いわく、
「昨晩、アイデアが降ってきてさー。一気に描きあげちゃったの」
とのこと。
その部屋には、2フロア分の高さがある吹き抜けの壁。
そこに掛けられた巨大なキャンバスには、迫力のある抽象画が。
横には脚立。
そのてっぺんに乗って、夢中で描いていたそうです。
「寝ようとした瞬間に、降ってきたんだよね」と笑っていました。
10年ほど前、イタリアでも似たような場面がありました。
新規事業の取り組みで壁にぶつかっていたとき、
イタリア人3人と日本人2人で2時間ほど激論。
でも結論は出ず、いったん休憩することに。
全員で席を立った瞬間――
あるイタリア人の同僚が、急に立ち止まり、
首をピクッと傾けて、天井を見上げました。
そして次の瞬間、右手の手のひらをパーンと額に当てて、
「あっ!!」という表情。
ぼくは彼のすぐ後ろを歩いていて、
アイデアが降ってくる瞬間を、生で目撃しました(笑)
そんなぼくにも、最近、“降ってきた”瞬間がありました。
7年ほど前、アメリカ人の同僚のために書いた原稿があったのですが、
それが、ある相談を受けていたイタリア人の役に立ちそうだと思い、
追記と修正をして渡すことに。
でも、なかなかしっくりくるタイトルが思いつかず、
堂々巡りをしていたときに、突然、「あっ!」というひらめきが。
そこからは、そのキーワードを掘り下げながら一気に方向性が定まり、
表紙デザインの素案まで一気に完成。
早速その人に渡したところ、
「2回読んだ!これは私のバイブルになる!」と大絶賛。
20代の娘ちゃんにまで布教して、
さらに表紙デザインも、
「このままTシャツにして欲しい!」なんて言ってくれました(笑)
役に立ててよかったです。
7年寝かせたアイデアが、たった1日で花開く。
アイデアって、不思議ですよね。
考えないと出ないし、考えても出ない。
でも考え抜くと、ふとした瞬間に降ってくる。
みなさんにアイデアが降ってきた時はどんな感じでしたか?
あなたにも、心がワクワクするようなアイデアが、降りてきますように。