君の意味

金沢勇希の『君の意味』

日本人は心配性?

海外で、現地採用の20代日本人女性の教育担当をしています。

その子に経験を積んでもらうため、今度来る日本の重役との会議で、通訳を担当してもらうことにしました。

……とはいえ、その重役が来ることになったのは、わずか1週間前。日程も、誰と話すのかも、ギリギリまで決まりませんでした。

ようやく前日になって、ようやく全体像が見えてきた――そんな状態。

彼女はとても気配りのできる子で、心配性でもあります。

だからこそ、事前に資料や会議の議題をお願いしていたり、「会議を録画してもいいですか?」と相談してくれたりしていました。

その様子を見て、社長がひとこと。

「彼女はとても日本人的で、心配性だね」

それは同時に誉め言葉でもありました。
細かいことに気づけるのは、心配性と見えるほどに想定力があるから。
実際、本人いわく緊張しすぎて眠れないこともあるそうです(笑)

そのとき、社長がふと立ち止まり、ぼくを振り返りました。

「君は、他の日本人みたいに心配性じゃないね」

少し驚いたような表情でした。
これまで一緒に乗り越えてきた出来事が、彼の中で一瞬フラッシュバックしたのかもしれません。思わず笑ってしまいました。

ぼくは社長に言いました。

「色々、経験してますから」

たとえば、今回彼女が担当するような“重役との通訳”。

ぼくも社会人1年目のとき、急な代打でグループ会社のアメリカ人社長の通訳を頼まれたことがあります。

そのときは、もちろん緊張しました。
彼女と同じように、迷惑をかけないようにと、考えうる失敗パターンをすべて洗い出し、ひとつひとつ対策を打っていきました。

直前まで何度もトイレに行ったし、正直ちょっと手も震えていました(笑)

専門用語の一部がわからず、通訳が曖昧になってしまったところもあります。
でも、発表の合間に聞こえてくる雑談まで訳し、他の役員の意見を通訳する際には、その背景まで補足して説明したりしていました。

外国人であるその社長が「その場の空気がわからないかもしれない」と配慮した結果です。

結果、とても喜ばれました。

そしてその後、また別の現場で、今度はイタリア人の社長との通訳も任されました。

最初の経験を乗り越えたおかげで、次は少しだけ、緊張が和らいでいました。

そうして、これまで何度も、各国の要人への通訳や、会社を代表しての社長交渉などを経験してきました。

もう、かれこれ17年以上になります。

百戦錬磨とは、こういう意味かもしれません。

最も怖くて緊張するのは、「はじめて」の経験です。
でも、何度か経験すると、いつの間にか“緊張すること”すら忘れていきます。

だからこそ、最初の挑戦は、できるだけハードルを下げて。
失敗しても大きなダメージがないようにしておくのが大事です。

最初の数回を乗り越えれば、もう怖くありません。

あなたには、どんな「初体験の思い出」がありますか?

そして、これから踏み出そうとしている挑戦には、どんな意味があるでしょうか。

これから新しいことに挑むあなたが、勇気ある一歩を踏み出せますように。

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